書籍紹介『他者の声 実在の声』
こえラボ編集部/2025年7月15日
心の内に響く“こえ”と向き合う。
この考え方のきっかけのひとつとなったのが、野矢茂樹氏の『他者の声 実在の声』でした。
こえラボ編集長、藤平です。
本書は、ウィトゲンシュタイン研究で有名な哲学者・野矢茂樹氏が、10年ほどの間に書き留めた哲学エッセイの中から19編を選定、加筆修正してまとめた書籍です。
哲学がテーマではあるものの、語り口は軽快で、使われている言葉も身近で親しみやすく、どんどん読み進めることができます。
各編の切り口や書きぶりは多様ですが、「自分」「他者」「言葉」「声」が通底しています。言葉と声という装備で、他者にどう挑んでいくか。
その中心にどんと座るのが、本書と同じタイトルの「他者の声・実在の声」です。
これまで議論されてきた他我問題、外界問題に出口はなく、ただの洞窟に過ぎない。他者が用いる言葉の意味と自分の言葉の意味のズレから現れる意味の他者性が、「さあ、理解してごらん」「さあ、語りだしてごらん」という誘惑がかすかに、あるいは声高に、響いている。
野矢氏はそこにこそ、「実在性」の在りかを見たい、と言います。
私たちは、会話の中で、絶えず意味のすれ違いを感じています。それは憂うべきものではなく、当然であって、むしろ魅力あるものとして追い続けた先に他者と実在がある。
その道を照らしてくれる、あるいは道そのものを教えてくれるのが、まさに“こえ”です。
だからこそ、“こえ”と向き合うことがときに苦しいのかもしれませんが……
野矢氏の言葉を聞くと、不思議と勇気づけられたりもします。
よければみなさんも触れていただけたら幸いです。