書籍紹介『おこだでませんように』

こえラボ編集部/2025年8月27日

 放たれた言葉の“こえ”は、どこにあるのでしょうか。

 “声”から相手の“こえ”を汲み取る過程について、改めて姿勢を正したいと思えるような本をご紹介します。

タイトル:おこだでませんように
著者:くすのきしげのり 
https://www.shogakukan.co.jp/books/09726329

 こえラボ編集部の葉山です。

 本書は、とある男の子の“こえ”が綴られていく絵本です。

 小学生になったばかりの「ぼく」は、家でも学校でも怒られてばかり。お母さんが仕事で遅い日は宿題を後回しにして妹と遊んでやるのに、妹はいつもわがままを言って泣く。仕事から帰ってきたお母さんに、妹を泣かせたこと、宿題をやっていないことを、ぼくだけが怒られる。

 入学式で「大きな声で良いね」と褒められたから廊下でも大きな声で歌ったら、先生に「もう少し静かにしなさい」と怒られる。大きくてかっこいいカマキリを捕まえて見せたら、クラスの女子が泣いてしまって、また怒られる。友達に遊ぼうって言ったけど輪に入れてもらえなくて、蹴って殴ったら先生に怒られる。先生は「暴力はいけません」って言うけれど、「お前は仲間に入れてやらない!」は、こころへの暴力じゃないの?友達が先に言ってきたのに、ぼくだけが怒られる。

 ぼくと話すとき、みんないつも怒っている。ぼくは、わるいこなんだろうか。

 いつも怒られてばかりの「ぼく」は、習ったばかりのひらがなで、七夕の短冊に「ある願いごと」をしたためます。

 本書に登場する「ぼく」は“こえ”にとても素直で、思った通りそのまま発言し、行動しています。ただ、やりすぎてしまったりその場にそぐわなかったりして、結果的に周囲の大人に叱られてしまう。よかれと思って起こした行動と、毎回なぜか怒られるという結果の矛盾に、男の子はぐっと口をつぐみます。

 私たちが相手の言葉や行動=“声”を受け取ったとき、そこにある“こえ”を汲むまでの過程には、「私たち自身の先入観」というフィルターがかかります。すると、自らの価値観だけで判断しただれかの“声”は、その向こうにある“こえ”をも、勝手にどこかへ当てはめてしまうように思います。

 「ぼく」の祈りにも似た小さな願いごとを通して、相手の“声”と“こえ”に対し「素直な眼差しを向ける」という姿勢について、真摯であったかどうか。だれかの言葉に耳を傾けるとき、私たち自身がまず背筋を正さねばならないのではないかと、問いかけてくれる絵本です。

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